2011年11月01日
ウッドラケットで優勝した最後のプレーヤー
ご存知の方もおられるかもしれませんが、ミロスラフ・メシールは、実は、ウッドラケットでシングルスの優勝した最後のプレーヤーとして記録(記憶)されています。メシール自身は、選手時代のインタビューで「グラファイトのラケットも使ってみたけれど、子どものころから使い慣れたウッドのラケットを換えることはできなかった」とコメントしています。ほとんどすべてのプレーヤーが、子どものころに使っていたウッドラケットをグラファイト系に換えていった1980年代の話です。
さて、メシールは、なぜ、ウッドのラケットにこだわったのでしょうか?私は、それは、ウッドラケットが振動吸収性の高いラケットだったからだと考えています。メシールのようなフラットドライブ系プレーヤーは、本質的に、柔らかく振動吸収性が高いラケットを好む傾向にあると思っています。
今回は、フラットドライブ系プレーヤーと振動吸収性の高いラケットの関係について、考えてみたいと思います。
一昨日、Dunlop社のNEOMAX2000のインプレを書きました。その際に、NEOMAX2000は、私の個人的な印象ですが、打球感がかつてのMAX200Gに似ており、「振動が少なく、鈍く厚い打球感」と書きました。
この打球感は、どうやって作られるのかなぁ…と考えていたのですが、ふと、思ったのが、運動量保存の法則とエネルギー保存の法則です。この2つの物理法則と「少ない振動・鈍く厚い打球感」がどんな関係にあるのかを、今回、考察してみようと思います。
さて、私のようなフラット(フラットドライブ)系のボールを打つ場合には、自分の打った球に順回転をかけることは主目的にはなりません。ボールの速度(移動速度)が重要です。一方、相手の打った球は、速度と回転を両方持っています。特に、相手がスピナーの場合は、回転の比重がその分大きくなります。
相手のボール(速度と回転)を自分のボール(速度中心)にして打ち返したいのが、フラットドライブ系のストロークの目的となります。「いかに相手のボールの速度を利用しながら、しかしボールの回転を殺すか」が、フラットドライブ系の課題になるわけです。
運動量については、重いラケットでボール方向に垂直にラケット面を作り、ボール方向にスイングする(ボール進行方向とラケット面が移動する方向が一直線になる)と保存できます。つまり、このようにラケットを振るお、相手のボールの速度と同じ速度(またはそれよりも速い速度)でボールを打ちかえすことができます。ラケットが(ボールの重さと比べて)重ければ重いほど、速度を作りやすくなります。(ラケットが重いと、その分だけ体や腕に対する負担が大きくなるので、ラケットが重ければよいというわけでもありませんが。)
回転については、スピン系ボールをフラットドライブ系ボールで打ち返すことを考えると、相手のボールと自分のボールは回転方向が逆になります。つまり、相手のボールの回転をすべて吸収して、さらに、それとは逆の回転をかけることになります。
その方法は、おおざっぱにいうと、①順回転方向にボールを打つことで相手のボールの回転を逆の回転にする、②ラケットでボールの回転エネルギーを吸収する、の2つがあり得ます。②では、相手のボールの回転を逆回転にすることはできませんが、回転を0にすることは(理屈上は)できます。
多くのスピン系のプレーヤーは、①を行うために、ラケットをボールに対してこすり上げます。フラットドライブ系プレーヤーも、①が中心となりますが、ラケットが②を行ってくれるとその分だけスイングは楽になります。
さて、ここからが本題です。私がMAX200GやNEOMAX200Gなどの振動吸収系ラケットが好きな理由は、もしかしたら、上の②の仕事をラケットがしてくれるからなのではないかと思ったのです。振動吸収とは、実は、ボールの回転吸収なのではないかと。これらのDunlop社のラケットにかかわらず、一般的に、フレームの柔らかい(振動吸収系の)ラケットは、相手のボールの回転エネルギーを吸収しやすいと(直観的には)思います。
ただし、ボールのエネルギーを吸収するラケットは、欠点もいくつかあります。
一つは、ボールの回転エネルギーと同時に、運動エネルギーも吸収してしまうということです。つまり、相手の打ったボールの速度も吸収してしまうということです。速度を吸収してしまうと、その分、速いボールを打てません。その際に役に立つのが、ラケットの重さです。運動エネルギーを吸収してもボールに反対方向の速度を与えるためには、ラケット自身が重ければその分だけ容易になります。(運動エネルギーは吸収しても、運動量は保存できるからです。)
もう一つは、ボールの回転エネルギーをラケットが吸収した際に、そのエネルギーはどこに行くのかということです。フラットドライブ系プレーヤーにとってはエネルギー吸収系ラケットは望ましいかもしれませんが、ラケットが吸収したエネルギーが振動として腕に伝わってしまうと、テニスエルボなどの故障の原因となってしまいます。
ラケットが吸収したエネルギーをどのように振動エネルギーとしてラケット内で消費するかという技術は、私にはよく分かりません。が、時々、ラケットの振動吸収をアピールするラケットの広告(振動が急激に小さくなるグラフなど)を見ると、そういう技術があるのだと思います。
この話は、おそらく、スポーツ学などでは常識的な(基本的な)話かもしれません。また、理屈と実際は、実はかなり一致しないのかもしれません。
が、フラット系グランドストロークの私が、どうして、NEOMAX2000のような「柔らかくて振動吸収性の高いラケット」が好きで、それに鉛をべたべたと貼って使っているのかを考えると、物理の理屈とは見事に一致します。今まで、無意識に、物理法則を考えてラケットを選んでいたのかもしれません。
理屈にも合うのですから、NEOMAX2000が、ますます好きになりそうです(笑)。
さて、メシールは、なぜ、ウッドのラケットにこだわったのでしょうか?私は、それは、ウッドラケットが振動吸収性の高いラケットだったからだと考えています。メシールのようなフラットドライブ系プレーヤーは、本質的に、柔らかく振動吸収性が高いラケットを好む傾向にあると思っています。
今回は、フラットドライブ系プレーヤーと振動吸収性の高いラケットの関係について、考えてみたいと思います。
一昨日、Dunlop社のNEOMAX2000のインプレを書きました。その際に、NEOMAX2000は、私の個人的な印象ですが、打球感がかつてのMAX200Gに似ており、「振動が少なく、鈍く厚い打球感」と書きました。
この打球感は、どうやって作られるのかなぁ…と考えていたのですが、ふと、思ったのが、運動量保存の法則とエネルギー保存の法則です。この2つの物理法則と「少ない振動・鈍く厚い打球感」がどんな関係にあるのかを、今回、考察してみようと思います。
さて、私のようなフラット(フラットドライブ)系のボールを打つ場合には、自分の打った球に順回転をかけることは主目的にはなりません。ボールの速度(移動速度)が重要です。一方、相手の打った球は、速度と回転を両方持っています。特に、相手がスピナーの場合は、回転の比重がその分大きくなります。
相手のボール(速度と回転)を自分のボール(速度中心)にして打ち返したいのが、フラットドライブ系のストロークの目的となります。「いかに相手のボールの速度を利用しながら、しかしボールの回転を殺すか」が、フラットドライブ系の課題になるわけです。
運動量については、重いラケットでボール方向に垂直にラケット面を作り、ボール方向にスイングする(ボール進行方向とラケット面が移動する方向が一直線になる)と保存できます。つまり、このようにラケットを振るお、相手のボールの速度と同じ速度(またはそれよりも速い速度)でボールを打ちかえすことができます。ラケットが(ボールの重さと比べて)重ければ重いほど、速度を作りやすくなります。(ラケットが重いと、その分だけ体や腕に対する負担が大きくなるので、ラケットが重ければよいというわけでもありませんが。)
回転については、スピン系ボールをフラットドライブ系ボールで打ち返すことを考えると、相手のボールと自分のボールは回転方向が逆になります。つまり、相手のボールの回転をすべて吸収して、さらに、それとは逆の回転をかけることになります。
その方法は、おおざっぱにいうと、①順回転方向にボールを打つことで相手のボールの回転を逆の回転にする、②ラケットでボールの回転エネルギーを吸収する、の2つがあり得ます。②では、相手のボールの回転を逆回転にすることはできませんが、回転を0にすることは(理屈上は)できます。
多くのスピン系のプレーヤーは、①を行うために、ラケットをボールに対してこすり上げます。フラットドライブ系プレーヤーも、①が中心となりますが、ラケットが②を行ってくれるとその分だけスイングは楽になります。
さて、ここからが本題です。私がMAX200GやNEOMAX200Gなどの振動吸収系ラケットが好きな理由は、もしかしたら、上の②の仕事をラケットがしてくれるからなのではないかと思ったのです。振動吸収とは、実は、ボールの回転吸収なのではないかと。これらのDunlop社のラケットにかかわらず、一般的に、フレームの柔らかい(振動吸収系の)ラケットは、相手のボールの回転エネルギーを吸収しやすいと(直観的には)思います。
ただし、ボールのエネルギーを吸収するラケットは、欠点もいくつかあります。
一つは、ボールの回転エネルギーと同時に、運動エネルギーも吸収してしまうということです。つまり、相手の打ったボールの速度も吸収してしまうということです。速度を吸収してしまうと、その分、速いボールを打てません。その際に役に立つのが、ラケットの重さです。運動エネルギーを吸収してもボールに反対方向の速度を与えるためには、ラケット自身が重ければその分だけ容易になります。(運動エネルギーは吸収しても、運動量は保存できるからです。)
もう一つは、ボールの回転エネルギーをラケットが吸収した際に、そのエネルギーはどこに行くのかということです。フラットドライブ系プレーヤーにとってはエネルギー吸収系ラケットは望ましいかもしれませんが、ラケットが吸収したエネルギーが振動として腕に伝わってしまうと、テニスエルボなどの故障の原因となってしまいます。
ラケットが吸収したエネルギーをどのように振動エネルギーとしてラケット内で消費するかという技術は、私にはよく分かりません。が、時々、ラケットの振動吸収をアピールするラケットの広告(振動が急激に小さくなるグラフなど)を見ると、そういう技術があるのだと思います。
この話は、おそらく、スポーツ学などでは常識的な(基本的な)話かもしれません。また、理屈と実際は、実はかなり一致しないのかもしれません。
が、フラット系グランドストロークの私が、どうして、NEOMAX2000のような「柔らかくて振動吸収性の高いラケット」が好きで、それに鉛をべたべたと貼って使っているのかを考えると、物理の理屈とは見事に一致します。今まで、無意識に、物理法則を考えてラケットを選んでいたのかもしれません。
理屈にも合うのですから、NEOMAX2000が、ますます好きになりそうです(笑)。
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