2011年10月22日
東レパンパシフィック2011決勝 ~やっぱりたった5歩のダンス
少し時間がたってしまいましたたが、東レパンパシフィックオープン2011の決勝戦をテレビ観戦しました。
素人の私が見えてもパワーで劣るラドワンスカが、ランキング4位のズボナレワに圧勝しました。私は試合を見ていませんが、ラドワンスカの準決勝の相手はやはりパワーテニスのアザレンカですので、準決勝でも、おそらく、同じようなテニスを展開したのだと思います。
試合を見る限り、ズボナレワが自滅したという人が多いかもしれませんが、試合を見ていて、私には、ラドワンスカがズボナレワに「打ち勝った」と思いました。
どうして、あんなに小柄なラドワンスカがズボナレワの強打に打ち負けるどころか、打ち勝つことができたのか…。テニスにおいて、パワー(球威)のあるボールを打つポイントは、スイングの速さではなく、ステップ(足運び)なのではないかと思ったのです。
以前、たった5歩のダンス、というブログを書きました。テニスにおいては、実は、このステップ(ダンス)が、最も重要なポイントの一つなのではないかと、改めて思いました。テニスは、体格ではないのです。
もちろん、そのステップを支える下半身の安定感については、体格が有利・不利になることもあるでしょう。しかし、小柄で細身のラドワンスカは、私に、希望を与えてくれました。
当時のブログを、再度、掲載したいと思います。2011年のウィンブルドンについて書いた記事です。
ウィンブルドンの試合をテレビで見るのは何年振りかだったのですが、今年は、特に、神尾米さんが解説を担当されていた第1週目(前半)の女子の試合を中心に、WOWOWで放映された何試合かを見ました。(私は、米さんのファンなので(笑)。)
今年の女子は、クビトバ(チェコ)の初優勝で幕を閉じた女子シングルスですが、女子の試合を何試合か見ているうちに、ふと気が付いたことがあります。
それは、大型化が進む女子選手の中に、比較的小柄であったり、またはスリムであったりするプレーヤーが混じっている(残っている?)ということです。
最近の女子テニス界は、ウイリアムス姉妹はもちろんのこと、シャラポワ、アザレンカ、クビトバ、リシツキと、大型でスケールの大きなテニスをする女子プレーヤーが目立ちます。
その中で、時々、小柄またはスリムな選手が時々上位に進出するのですが、これが楽しみの一つになっています。たとえば、今年、私が見た試合では、ピロンコバ(ブルガリア)やエラコビッチ(ニュージーランド:ダブルスでベスト4)などがそうでしょうか。(少し前だと、ヒンギスがそうですね。そういえば、エナンの2度目の引退は、残念でなりません。)
しかし、ただ小柄だったらよいというわけではありません。たとえば、準々決勝でアザレンカと戦ったオーストリアのパスゼックは、小柄ですが、私にはあまり魅力的なテニススタイルには見えませんでした。
体格がよい(もっと正確には身長と体重がある)選手は、フットワーク(正確にはステップ)とストロークが独立しても強いボールを打つことができます。フットワークを使ってボールの打点にまず移動する。移動してから、改めてボールに体重を乗せてボールを打つ。この2つの作業を別々に、連続して行うことができるのです。
しかし、体格がよいわけではない選手は、ステップワークとストロークがうまく同期(シンクロ)しなくてはなりません。打点のところまでのステップは、同時に、ストロークの一部でなくてはなりません。コート上での動きは、すべてが、ストロークの一部というわけです。そのためには、力の使い方も、体の使い方も、そしてステップにも無駄がありません。
そういうプレーヤーは、見ていて美しいし、楽しいのです。別項(メシールのテニス(12) なぜメシールのテニスは美しいのか~フットワークについて)で書きましたが、私がメシールのテニスが好きな理由は、メシールは典型的な後者のプレーヤーだからです。他には、かつてのチェコスロバキア選手として活躍したハナ・マンドリコバなどがそうでしょう。精神的にむらっけがあったものの、マンドリコバのプレーは、コートの中でまるで踊っているように美しいものでした。
話は変わりますが、もし、あなたが、ベースラインの真ん中で構えてベースライン上で相手のボールをストロークで打つとして、ボールをヒットするのに何歩が必要かご存知ですか?ご存知がない方は、ぜひ、一度、コートで試してみてください。意外に少ないことに驚かれると思います(私は驚きました)。
たとえば、私の場合、フォアハンドはほぼ2歩、バックハンドは3歩です。つまり、合計でたった5歩で、実は、ベースラインの端から端までをカバーできるのです。最初の一歩は、フォアもバックも、ボールと反対側の足になります。たとえば、フォアハンドでは、左足が一歩目になります。
フォアハンドとバックハンドで歩数が違うのは、私の場合は(メシールを真似して)フォアハンドは基本的にはオープンスタンスで打つからです。また、実は、2歩では、サイドラインから50㎝~1mほど足りないため、本当にギリギリのボールに対しては、あと1歩(または2歩)必要になることもあります。私のレベル(中級)ではそこまできわどい球が飛んでくることは、ほとんどありませんが。
つまり、テニスのストローク戦は、この5歩でどこまで戦えるかということになります。たった5歩と言っても、簡単ではありません。特に、ボールを打った後で元のポジションに戻るときも、フォア2歩、バック3歩で戻らねばなりません。ストロークで、右足または左足に体重が乗っているところでそれを戻し、さらに、少ない歩数でレディーポジションに戻るためには、ボールに入る・ボールを打つ・体重を戻す・レディーポジションに戻るという一連の動きがスムーズであることが求められます。
この一連の動きに無駄がなく、スムーズでなめらかであると、テニス全体が美しく感じます。
コートの上で、フットワークとストロークには境目はありません。フットワークを含めた大きな一つのストロークプレーがあるだけです。
広いコート上での、たった、5歩の、ダンス。
特に、両手バックハンドは、左膝と腰をしっかり落とすことが大切ですので、バックハンドの一連の動きのフットワーク全体に対する負担は大きくなります。メシールが、バックハンドストロークのアンフォースドエラーの後で、「もっとしっかり腰を落として!」と自分に言い聞かせるのを何度か見たことがあります。それでも、一連の動きはスムーズでなくてはなりません。
5歩の動きの中で、ボールをヒットする。これがスムーズで同期しているテニスこそが、美しいテニスです。バランスを崩さず、体重移動をスムーズに、そしてその中でボールとの距離の微調整をうまく取れること。ボールを強くたたくことよりも、ボールに強いスピンをかけるよりも、流れるようなプレーの中で重いボールを打つことが大切です。
このブログの最初の目的は、私自身が、なぜ、メシールのテニスを美しいと感じるかということでした。少しずつ、その答えに迫ってきているように感じます。
素人の私が見えてもパワーで劣るラドワンスカが、ランキング4位のズボナレワに圧勝しました。私は試合を見ていませんが、ラドワンスカの準決勝の相手はやはりパワーテニスのアザレンカですので、準決勝でも、おそらく、同じようなテニスを展開したのだと思います。
試合を見る限り、ズボナレワが自滅したという人が多いかもしれませんが、試合を見ていて、私には、ラドワンスカがズボナレワに「打ち勝った」と思いました。
どうして、あんなに小柄なラドワンスカがズボナレワの強打に打ち負けるどころか、打ち勝つことができたのか…。テニスにおいて、パワー(球威)のあるボールを打つポイントは、スイングの速さではなく、ステップ(足運び)なのではないかと思ったのです。
以前、たった5歩のダンス、というブログを書きました。テニスにおいては、実は、このステップ(ダンス)が、最も重要なポイントの一つなのではないかと、改めて思いました。テニスは、体格ではないのです。
もちろん、そのステップを支える下半身の安定感については、体格が有利・不利になることもあるでしょう。しかし、小柄で細身のラドワンスカは、私に、希望を与えてくれました。
当時のブログを、再度、掲載したいと思います。2011年のウィンブルドンについて書いた記事です。
ウィンブルドンの試合をテレビで見るのは何年振りかだったのですが、今年は、特に、神尾米さんが解説を担当されていた第1週目(前半)の女子の試合を中心に、WOWOWで放映された何試合かを見ました。(私は、米さんのファンなので(笑)。)
今年の女子は、クビトバ(チェコ)の初優勝で幕を閉じた女子シングルスですが、女子の試合を何試合か見ているうちに、ふと気が付いたことがあります。
それは、大型化が進む女子選手の中に、比較的小柄であったり、またはスリムであったりするプレーヤーが混じっている(残っている?)ということです。
最近の女子テニス界は、ウイリアムス姉妹はもちろんのこと、シャラポワ、アザレンカ、クビトバ、リシツキと、大型でスケールの大きなテニスをする女子プレーヤーが目立ちます。
その中で、時々、小柄またはスリムな選手が時々上位に進出するのですが、これが楽しみの一つになっています。たとえば、今年、私が見た試合では、ピロンコバ(ブルガリア)やエラコビッチ(ニュージーランド:ダブルスでベスト4)などがそうでしょうか。(少し前だと、ヒンギスがそうですね。そういえば、エナンの2度目の引退は、残念でなりません。)
しかし、ただ小柄だったらよいというわけではありません。たとえば、準々決勝でアザレンカと戦ったオーストリアのパスゼックは、小柄ですが、私にはあまり魅力的なテニススタイルには見えませんでした。
体格がよい(もっと正確には身長と体重がある)選手は、フットワーク(正確にはステップ)とストロークが独立しても強いボールを打つことができます。フットワークを使ってボールの打点にまず移動する。移動してから、改めてボールに体重を乗せてボールを打つ。この2つの作業を別々に、連続して行うことができるのです。
しかし、体格がよいわけではない選手は、ステップワークとストロークがうまく同期(シンクロ)しなくてはなりません。打点のところまでのステップは、同時に、ストロークの一部でなくてはなりません。コート上での動きは、すべてが、ストロークの一部というわけです。そのためには、力の使い方も、体の使い方も、そしてステップにも無駄がありません。
そういうプレーヤーは、見ていて美しいし、楽しいのです。別項(メシールのテニス(12) なぜメシールのテニスは美しいのか~フットワークについて)で書きましたが、私がメシールのテニスが好きな理由は、メシールは典型的な後者のプレーヤーだからです。他には、かつてのチェコスロバキア選手として活躍したハナ・マンドリコバなどがそうでしょう。精神的にむらっけがあったものの、マンドリコバのプレーは、コートの中でまるで踊っているように美しいものでした。
話は変わりますが、もし、あなたが、ベースラインの真ん中で構えてベースライン上で相手のボールをストロークで打つとして、ボールをヒットするのに何歩が必要かご存知ですか?ご存知がない方は、ぜひ、一度、コートで試してみてください。意外に少ないことに驚かれると思います(私は驚きました)。
たとえば、私の場合、フォアハンドはほぼ2歩、バックハンドは3歩です。つまり、合計でたった5歩で、実は、ベースラインの端から端までをカバーできるのです。最初の一歩は、フォアもバックも、ボールと反対側の足になります。たとえば、フォアハンドでは、左足が一歩目になります。
フォアハンドとバックハンドで歩数が違うのは、私の場合は(メシールを真似して)フォアハンドは基本的にはオープンスタンスで打つからです。また、実は、2歩では、サイドラインから50㎝~1mほど足りないため、本当にギリギリのボールに対しては、あと1歩(または2歩)必要になることもあります。私のレベル(中級)ではそこまできわどい球が飛んでくることは、ほとんどありませんが。
つまり、テニスのストローク戦は、この5歩でどこまで戦えるかということになります。たった5歩と言っても、簡単ではありません。特に、ボールを打った後で元のポジションに戻るときも、フォア2歩、バック3歩で戻らねばなりません。ストロークで、右足または左足に体重が乗っているところでそれを戻し、さらに、少ない歩数でレディーポジションに戻るためには、ボールに入る・ボールを打つ・体重を戻す・レディーポジションに戻るという一連の動きがスムーズであることが求められます。
この一連の動きに無駄がなく、スムーズでなめらかであると、テニス全体が美しく感じます。
コートの上で、フットワークとストロークには境目はありません。フットワークを含めた大きな一つのストロークプレーがあるだけです。
広いコート上での、たった、5歩の、ダンス。
特に、両手バックハンドは、左膝と腰をしっかり落とすことが大切ですので、バックハンドの一連の動きのフットワーク全体に対する負担は大きくなります。メシールが、バックハンドストロークのアンフォースドエラーの後で、「もっとしっかり腰を落として!」と自分に言い聞かせるのを何度か見たことがあります。それでも、一連の動きはスムーズでなくてはなりません。
5歩の動きの中で、ボールをヒットする。これがスムーズで同期しているテニスこそが、美しいテニスです。バランスを崩さず、体重移動をスムーズに、そしてその中でボールとの距離の微調整をうまく取れること。ボールを強くたたくことよりも、ボールに強いスピンをかけるよりも、流れるようなプレーの中で重いボールを打つことが大切です。
このブログの最初の目的は、私自身が、なぜ、メシールのテニスを美しいと感じるかということでした。少しずつ、その答えに迫ってきているように感じます。
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